2026年度の最低賃金、目安は全国平均55円引き上げ——10月までにやる4つの点検

2026年度の最低賃金、目安は全国平均55円引き上げ——10月までにやる4つの点検

2026年7月28日、中央最低賃金審議会が令和8年度の地域別最低賃金額改定の目安を答申しました。引き上げ額はAランク54円(4.9%)、Bランク56円(5.2%)、Cランク56円(5.4%)、全国加重平均で55円(4.9%)です。

目安どおりに改定されれば、全国加重平均は現行の1,121円から1,176円になります。ランクの内訳はAランクが6都府県、Bランクが28道府県、Cランクが13県です。

ここからは各都道府県の地方最低賃金審議会で審議が行われ、実際の改定額と発効日が決まります。目安は目安であって確定額ではありませんが、企業側の準備は答申の時点から始められます。

目次

発効前に確認する4項目

1. 影響を受ける従業員の洗い出し

時給者だけを見ても足りません。月給者も、月額を所定労働時間で割った時間額が最低賃金を下回っていないかを確認する必要があります。

比較に使う賃金からは、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外・休日・深夜の割増賃金、臨時に支払われる賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除きます。基本給と、除外対象でない諸手当だけで判定します。除外対象を含めたまま比較すると、下回っている従業員を見落とします。

拠点が複数の都道府県にまたがる場合は、適用される最低賃金が拠点ごとに変わります。ランクの差で引き上げ額も違うため、本社所在地の額だけで一律に判定できません。

特定(産業別)最低賃金が設定されている業種では、地域別最低賃金と両方が適用され、高いほうの額が基準になります。鉄鋼、電子部品、自動車小売業などが対象です。地域別だけを見て判定すると、特定最低賃金を下回ったまま気づけません。改定の時期も地域別とは別に設定されるため、年に2回確認する必要があります。

2. 昇給後に生じる賃金の逆転

最低賃金に合わせて下位層を引き上げると、その上の等級との差が縮みます。数年続けば、勤続の長い従業員と入社直後の従業員の時間額がほぼ同じという状態が生まれます。

これは法令違反ではありませんが、定着率に効いてきます。最低賃金対応を賃金表の見直しと切り離して毎年その場で処理していると、賃金体系が徐々に平坦になります。改定のたびに全等級を見る運用にしておくほうが、結果的に手戻りが少なくなります。

3. 社会保険の適用範囲への影響

時間額が上がれば、同じ労働時間でも月額賃金が上がります。短時間労働者の社会保険適用要件のうち、月額賃金8.8万円以上という基準に新たに該当する人が出ます。

2026年10月には社会保険の適用拡大も控えています。最低賃金の引き上げと適用拡大が同じ時期に重なるため、「今は対象外」として扱っている短時間労働者のうち何人が対象になるかを、事前に試算しておく価値があります。適用拡大の内容は2026年10月の社会保険適用拡大に向けて今やるべき5つのことで扱いました。

4. 発効日をまたぐ賃金計算期間の処理

最低賃金の発効日は10月ごろで、賃金計算期間の途中に入ることがほとんどです。締め日が月末でない事業所では、1つの給与計算期間に改定前と改定後の時間額が混在します。

日割りで分けるか、期間全体に新額を適用するか。どちらを取るかは事業所の判断ですが、決めた方法を賃金規程と整合させておく必要があります。毎年その場で判断していると、年によって処理が変わり、後から説明できなくなります。

点検を仕組みに載せる

最低賃金の点検は、毎年同じ条件で全従業員に当てる処理です。判定条件が明文化できるため、自動化に向いています。

  • 従業員ごとの就業場所から、適用される都道府県の最低賃金を引き当てる
  • 賃金台帳から除外対象の手当を落とし、比較対象となる時間額を算出する
  • 改定後の額と比較し、下回る従業員を抽出する
  • 引き上げ後の月額賃金を再計算し、社会保険の適用要件に新たに該当する人を挙げる

拠点数が多い事業所ほど、この処理を手作業でやると時間がかかります。200拠点規模の事業所で勤怠・給与のデータを一元化した事例は200拠点のサービス業が勤怠管理をAIで一元化できた理由にまとめています。

法令や料率の改定を継続的に追いかける仕組みについては、法改正対応をAIエージェントに任せる時代がやってきたもあわせてご覧ください。

まとめ

2026年度の最低賃金は、目安どおりなら全国加重平均で1,176円になります。答申から発効までは2か月余り。この期間にやることは、影響人数の把握、賃金体系への波及の確認、社会保険適用への影響試算、計算期間をまたぐ処理の決定の4つです。

発効後に下回りが見つかると、差額の遡及支払が発生します。発効前に全件を確認しておくほうが、事後対応より確実に安く済みます。

参考:中央最低賃金審議会(厚生労働省)


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