年末調整は10月の準備で決まる——申告書を配る前に確認する4つのこと

年末調整は10月の準備で決まる——申告書を配る前に確認する4つのこと

年末調整の計算そのものは、その年の最後の給与を支払うときに行います(所得税法第190条)。12月の給与か賞与で税額の過不足を精算する、という流れです。

ただ、12月に見つかる誤りの多くは、計算式ではなく入力の段階で生じています。対象外の人を対象に入れていた、前職の源泉徴収票が届いていなかった、扶養親族の判定を前年の基準のまま行っていた。どれも10月に申告書を配る前に確認できることです。

この記事では、配付前に確認しておく4点を順に取り上げます。

目次

1. 年末調整の対象者を正しく線引きする

年末調整の対象は、給与所得者の扶養控除等申告書を提出していて、その年の給与の支払額が2,000万円以下の居住者です(所得税法第190条)。

この定義から外れる人は、年末調整をしません。実務で取りこぼしやすいのは次の3つです。

  • 扶養控除等申告書を出していない人:源泉徴収税額表の乙欄で源泉徴収している従業員です。副業先として働いている人が多く、本業の勤務先で年末調整を受けます
  • その年の給与が2,000万円を超える人:役員や高額の賞与を受けた従業員が該当します。本人が確定申告をします
  • 年の途中で退職した人:原則として対象外です。死亡による退職や、12月の給与を受け取った後の退職など、例外として年末調整をする場合があります

対象者の一覧を給与システムの「在籍者」から機械的に作ると、乙欄の従業員や年収2,000万円超の役員が混ざります。雇用区分とは別に、税額表の区分と年間支給見込額で絞り込む手順を入れておくと、この混入は起きません。

2. 中途入社者の前職分をそろえる

年の途中で入社した従業員は、前の勤務先で受け取った給与と源泉徴収税額を合算して年末調整をします。合算には前職の源泉徴収票が必要です。

前の勤務先は、退職日から1か月以内に源泉徴収票を交付する義務を負っています(所得税法第226条第1項)。それでも、本人が受け取ったまま提出を忘れているケースは少なくありません。

前職分を入れずに年末調整をすると、年収が実際より少なく計算されます。累進税率が低く適用されるため、年間の所得税額が本来より少なくなります。後から前職分が判明した場合、年末調整のやり直しか、本人の確定申告が必要になります。

10月の段階で、その年に入社した従業員の一覧を出し、前職の源泉徴収票の受領状況を1人ずつ確認しておくと、12月に慌てずに済みます。前職がない人(新卒・無職期間の後の入社)にも、その旨を本人に確認しておくほうが確実です。

退職者側の処理については、9月30日退職と9月29日退職で保険料が1か月分変わるで退職月の給与で起きる取り違えを整理しています。

3. 扶養親族の判定基準を前年のまま使わない

令和7年度税制改正で、扶養親族の判定に使う所得の基準が変わりました。扶養親族の合計所得金額の上限が48万円から58万円に引き上げられ(所得税法第2条第1項第34号)、給与所得控除の最低額も55万円から65万円に引き上げられています。

給与収入だけの親族で考えると、令和7年分では、いわゆる「103万円」の線が「123万円」に移りました。あわせて、19歳以上23歳未満の親族を対象とする特定親族特別控除が新設されています。親族の合計所得金額が58万円を超えても、一定の範囲までは控除を受けられる仕組みです。

令和8年分の年末調整で注意したいのは、社内の案内文や判定表が古いまま残っていることです。数年前に作った「103万円以下なら扶養」という案内を毎年使い回していると、従業員は申告書に誤った判断で記入します。

令和8年分に適用される判定額は、国税庁が公表する「令和8年分 年末調整のしかた」で確認し、社内資料の数字をそれに合わせて差し替えてください。19歳以上23歳未満に当たるのは、令和8年分では平成16年1月2日から平成20年1月1日までに生まれた親族です。生年月日と所得見込額がそろっていれば、判定は計算式で書けます。

4. 申告書の回収方法と締め切りを先に決める

年末調整で従業員から回収する書類は、扶養控除等申告書(所得税法第194条)、保険料控除申告書(所得税法第196条)、基礎控除・配偶者控除等・所得金額調整控除・特定親族特別控除の兼用申告書などです。扶養控除等申告書は、その年最初の給与支払日の前日までに提出してもらう決まりです。翌年分は、翌年最初の給与支払日より前に回収しておく必要があります。

回収で手戻りが出るのは、書類の種類より運用の側です。

よくある手戻り事前に決めておくこと
控除証明書の添付漏れ生命保険料・地震保険料の証明書は10月から11月に届く。回収期限をそれより後に置く
記入内容と添付書類の不一致申告額と証明書の金額を突き合わせる担当と時期
翌年分の扶養控除等申告書の回収漏れ当年分の申告書と同時に配付し、同じ期限で回収する
修正依頼の往復差し戻しの連絡経路(メール・システム・紙)を1つに絞る

電子で回収する場合は、控除証明書の電子データを受け付けるかどうかも決めておきます。紙と電子が混在すると、どちらで受け取ったかの管理が二重になります。

年末調整の結果は、翌年1月31日までに提出する給与支払報告書(地方税法第317条の6第1項)を通じて、翌年度の住民税額の基礎になります。12月の誤りは6月の住民税額にまで及びます。住民税の年度切替で確認する点は令和8年度の住民税、6月給与で確認すべき4点で扱いました。

10月中に済ませる順番

準備は次の順で進めると、12月の計算に入ったときの差し戻しが減ります。

  1. 対象者の一覧を作り、乙欄・年収2,000万円超・中途退職者を外す
  2. その年の中途入社者について、前職の源泉徴収票の有無を確認する
  3. 社内の案内文と判定表の数字を、令和8年分の国税庁資料に合わせて差し替える
  4. 申告書の回収期限と差し戻しの経路を決め、従業員に案内する

1と2は給与データから機械的に抽出できます。3と4は人が決める部分です。抽出できる部分と判断が要る部分を分けて運用する考え方は、給与計算BPOの品質はどう担保する?で紹介しています。


Work Rules社会保険労務士法人グループでは、BPO契約企業180社超の給与実務をもとに、年末調整の対象者抽出や前職分の確認といった定型の点検を仕組み化しています。年末調整の準備や運用の見直しについては、お問い合わせからご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次