令和8年度の労働保険年度更新は、2026年6月1日(月)から7月10日(金)までです。前年度の確定保険料と当年度の概算保険料を同時に申告・納付する、年に一度の手続きになります。
今年は3つの変更が重なりました。雇用保険料率の引き下げ、大法人の電子申請義務化、そして算定基礎届との日程重複です。順に整理します。
雇用保険料率が引き下げられた
令和8年度の雇用保険料率は、一般の事業で1.45%から1.35%に引き下げられました。労使合計の率です。農林水産・清酒製造の事業、建設の事業は別の率が適用されます。
料率が動く年は、確定保険料と概算保険料で異なる率を使うことになります。前年度分の確定保険料は令和7年度の率、当年度分の概算保険料は令和8年度の率。申告書の上下で使う数字が違うため、前年の申告書を複写して数字だけ差し替える運用をしていると取り違えが起きます。
賃金総額の集計そのものにも注意が要ります。労災保険と雇用保険では対象となる労働者の範囲が違い、労災保険は雇用形態を問わず全員が対象になる一方、雇用保険は被保険者に限られます。この二重集計を1つのExcelで管理していると、年度途中の入退社が片方にだけ反映されている状態が生まれます。
資本金1億円超の法人は紙の申告書が届かない
2026年度から、資本金の額または出資金の額が1億円を超える法人などについて、労働保険の年度更新は電子申請が義務化されています。該当する事業所には、従来届いていた紙の申告書(緑・青の封筒)が送付されません。
「今年は書類が届かない」という状態を、送付漏れと勘違いしないことです。届かないのが正しい挙動で、e-Govなどから電子申請を行う必要があります。電子証明書またはGビズIDの準備が済んでいないと、期限直前に手続きが止まります。
電子申請そのものの実務範囲については、2026年 社会保険の電子申請はここまで進んだで扱っています。
算定基礎届と時期が重なる
労働保険の年度更新(6月1日〜7月10日)と、社会保険の算定基礎届(7月1日〜7月10日)は、締切日が同じです。7月上旬の10日間に、性質の違う2つの集計作業が重なります。
この重複は毎年発生するものですが、担当者が少ない事業所ほど後半が圧迫されます。年度更新は賃金総額の年間集計、算定基礎届は4〜6月の3か月分の報酬月額の集計。参照する期間も、報酬に含める範囲も違います。同じ「給与データ」を見ているようで、切り出し方が別物です。
現実的な回避策は、年度更新を6月中に終わらせておくことです。年度更新の対象は前年度が確定した時点で計算できるため、6月1日以降であれば7月を待つ理由がありません。7月に入ってから両方に着手すると、どちらも締切に追われます。
納付の面でも6月中の完了が効きます。概算保険料が40万円以上(労災保険または雇用保険のどちらか一方のみの成立なら20万円以上)の場合、3回に分けた延納が選べます。第1期の納期限は7月10日で、申告と同じ日です。延納を選ぶかどうかを7月に入ってから検討すると、資金繰りの調整が間に合わなくなります。
集計を機械に寄せる
年度更新で時間を食うのは、賃金総額の集計とその検算です。
- 労災保険の対象賃金と雇用保険の対象賃金を、それぞれ別に集計する
- 賞与を含める、通勤手当を含める、退職金は含めないといった判定を全件に当てる
- 月次で集計した12か月分の合計と、年間の給与データから直接出した合計を突き合わせる
3つ目の突合が入っていない事業所は珍しくありません。月次で積み上げた数字だけを信じると、年度途中のマスタ変更や遡及支給が抜けたまま確定します。2つの経路で出した数字が一致するかを見れば、抜けはそこで止まります。
集計と検算は、判断を含まない定型処理です。当社では給与データの集計・突合をルール化して自動実行しており、担当者は不一致として挙がった行だけを確認する運用にしています。この分担の考え方は給与計算BPOの品質はどう担保する?で詳しく述べています。
期限までのチェックリスト
- 資本金1億円超に該当するか確認し、該当するなら電子申請の準備を先に済ませる
- 確定保険料は令和7年度の率、概算保険料は令和8年度の率で計算しているか確認する
- 労災保険と雇用保険で、対象労働者の範囲を分けて集計しているか確認する
- 月次積み上げの賃金総額と、年間データから直接算出した賃金総額を突き合わせる
- 概算保険料が前年度確定額の2倍を超える、または2分の1を下回る場合は、増加・減少の理由を説明できるようにしておく
- 年度更新は6月中に完了させ、7月は算定基礎届に充てる
まとめ
令和8年度の年度更新は、料率の変更と電子申請義務化という手続き面の変化が同時に来ています。どちらも、前年の手順をそのまま繰り返すと止まる種類の変化です。
作業量そのものを減らすには、賃金総額の集計と検算を仕組み側に移すのが現実的です。人が担うのは、増減理由の説明や、集計対象に含めるかどうかの判断といった、根拠を求められる部分に絞れます。
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